楽譜を購入する際、色々あって、どの楽譜がいいのかわからない、という相談をよく受けます。
前回プレインヴェンション の記事でも触れたように、楽譜は編集者(=演奏者、研究者)の手が入っているものがほとんどです。
作曲者は運指(=指番号)など基本、書きません。
これはどうやって弾いたら弾きやすいのだろう?と、後に演奏者、研究者、編集者が書き足して楽譜として出版されるのが一般的な流れです。
今でこそパソコンがありますが、昔はもちろん全て手書き。
そして作曲家の自筆譜というのは大抵、見にくい…。
音はなんとか読めるものの、作曲者が記したフレージングに関しては正確に読み取るのはそう簡単ではありません。
<ショパンの遺作ノクターンの自筆譜>

有名な作曲家のものだと、貴族や友人などに寄贈され、その後行方不明なものも多く、弟子が手書きで写したコピーのみが残っているということも多々あります。
それを更に、演奏家が独自の解釈でフレージングを書き、更に編集者がそれを編集し…となると『楽譜通りに弾く』が必ずしも正解ではない事がわかります。
(一種の伝言ゲームですね…)
ここで知っておいてもらいたいのが、『原典版』の存在。
原典版というのは、演奏者の解釈を一掃する事で、よりオリジナルの状態に近づけ、作曲者の意図を再現したもの。
『URTEXT』と表紙に表記されていれば、それは原典版です。
有名どころではくすんだ青の表紙のヘンレ版と、真っ赤な表紙のウィーン原典版でしょうか。ウィーン原典版は日本の音楽の友社も提携しており、アシュケナージやブレンデルなど超一流のピアニストの解説も運指や解説を加えています。
ヘンレ版は電子書籍にも力を入れています(以下リンク)
(https://www.henle.de/jp/shop/urtext/)
原典版は、しっかりとした予備知識がある者にとっては非常に信頼できる楽譜です。
好みでつけられたフレージングを作曲者が書いたものだと誤認する事がないので。
ん?このフレージング、なんだか変じゃない?と思った際、その曲の自筆譜を探すのは一苦労ですし、公開されていない可能性も、もちろんあるからです。
ただ、時々シューベルトのヘンレ版の楽譜で、作曲者自身のミスでlegatoをligatoと書いてあり、そのままligatoと残してあったり…。
『スペルミスくらい許可なしでいいから直してー!』
とシューベルト本人の声が聞こえてきそうですが(笑)
ただし、基礎知識を持たない人にとっては、(例えばバロック音楽)フレージングをどこからどう手をつけて良いのかわからない危険性もあるので、ご注意を!!
Haruna.